
ピックルボールのキッチン(ノンボレーゾーン)ルール完全解説|7つの主要ルールとよくある違反例
2026年2月28日
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ピックルボールのキッチン(ノンボレーゾーン)ルール完全解説
「キッチンに入ったらダメなんでしょ?」
ピックルボール初心者の方からよく聞くこの言葉、実は半分正解で半分間違いです。キッチンに入ること自体は違反ではありません。キッチンの中でボレー(ノーバウンドで打つこと)をすることが違反なのです。
キッチンルール(正式名称:ノンボレーゾーンルール)は、ピックルボールを他のラケットスポーツと決定的に差別化するルールであり、このスポーツの戦略性と面白さの根幹を成しています。しかし、その詳細は意外と複雑で、経験者でも正確に理解していないケースが少なくありません。
※本記事の情報は2026年3月時点のものです。
私たちピクラ編集部でも、始めたての頃はキッチンルールで混乱することが多々ありました。「これは違反?セーフ?」と悩む場面が何度もあり、ルールブックを読み込んだ経験があります。この記事では、その経験を活かして、キッチンルールを可能な限りわかりやすく、かつ正確に解説します。
ピックルボールのルール全般については「ピックルボールのルール完全ガイド」を、ピックルボール自体が初めての方は「ピックルボールとは?」を先にお読みください。
キッチンとは何か
コート上の位置と大きさ
キッチン(Kitchen)とは、ネットの両側にある 横6.1m(20フィート)× 縦2.13m(7フィート) のエリアのことです。正式名称は「ノンボレーゾーン(Non-Volley Zone / NVZ)」ですが、「キッチン」という愛称が広く浸透しています。
コート全体の中でのキッチンの位置:
┌─────────────────────┐
│ │
│ サービスエリア │
│ (バックコート) │
│ │
├─────────────────────┤
│ キッチン (2.13m) │ ← ここがノンボレーゾーン
├─────────────────────┤
│ ═══ ネット ═══════ │
├─────────────────────┤
│ キッチン (2.13m) │ ← 相手側にも同じエリア
├─────────────────────┤
│ │
│ サービスエリア │
│ (バックコート) │
│ │
└─────────────────────┘
キッチンの境界線(キッチンライン)はキッチンの一部です。つまり、ラインを踏んでいる状態は「キッチンの中にいる」とみなされます。
コートの大きさや設営方法の詳細は「コートサイズと設営ガイド」をご覧ください。
なぜ「キッチン」と呼ぶのか
「キッチン」という名称の由来には諸説あります。最も有力なのは、シャッフルボード(デッキの上でパックを滑らせるゲーム)の用語から来ているという説です。シャッフルボードでは、減点エリアのことを「キッチン」と呼びます。「キッチンに入ると厄介なことになる」という意味合いが、ピックルボールのノンボレーゾーンにも当てはまったことから、この愛称が定着したと言われています。
ピックルボールの歴史や用語については「ピックルボールの歴史」や「用語集(グロッサリー)」も参考にしてください。
なぜキッチンルールがあるのか
キッチンルールが存在する理由は、ゲームの公平性と戦略性を保つためです。
もしキッチンルールがなかったら、どうなるでしょうか? 背の高い人やパワーのある人がネット際に張り付き、上からスマッシュを打ち続ける展開になります。これでは体格差や腕力差がそのまま勝敗に直結し、技術や戦略の入り込む余地がなくなってしまいます。
キッチンルールがあることで、以下のような効果が生まれます。
- ネット際での力押しを防止: スマッシュ一辺倒の展開にならない
- 戦略的な駆け引きが生まれる: ディンク(小さなショット)やドロップショットの重要性が増す
- 体格差のハンデが小さくなる: 小柄な人やシニアでも対等に戦える
- ラリーが長く続く: 一発で決まらないため、粘りや読みが大切になる
- ピックルボール独自の面白さが生まれる: 他のラケットスポーツにはない駆け引きが発生する
7つの主要キッチンルール
ここからが本記事の核心です。キッチンルールを7つに整理して、1つずつ解説します。
ルール1: キッチン内でボレーをしてはいけない
最も基本的で重要なルールです。キッチンの中に立っている状態で、ボレー(ノーバウンドで打球すること)をしてはいけません。
- 違反: キッチン内に足を置いた状態で、ノーバウンドのボールを打つ
- OK: キッチンの外に立った状態で、ノーバウンドのボールを打つ(通常のボレー)
- OK: キッチン内に立った状態で、ワンバウンドしたボールを打つ
つまり、キッチン内でバウンドしたボールを打つことは全く問題ありません。「キッチンに入ってはいけない」のではなく、「キッチン内でボレーをしてはいけない」のです。
ボレーの基本技術については「ボレー完全ガイド」をご覧ください。
ルール2: ボレーの動作(モメンタム)でキッチンに入ってはいけない
キッチンの外でボレーを打ったとしても、その打球の勢い(モメンタム)でキッチン内に体が入ってしまった場合は違反です。
具体例:
- キッチンラインのすぐ後ろでボレーを打ち、その勢いで前に踏み出してキッチンラインを踏んだ → 違反
- ボレーを打った後、バランスを崩してキッチン内に倒れ込んだ → 違反
- ボレーを打った後、一歩も動かずにキッチンラインの外に留まった → OK
このルールはよく誤解されるポイントです。「ボレーを打った瞬間にキッチンの外にいればいいんでしょ?」と思われがちですが、打った後の動きも含めて判定されます。
ルール3: キッチンライン上はキッチン内とみなされる
キッチンの境界を示すライン(キッチンライン)は、キッチンの一部です。
- キッチンラインの上に足が少しでも乗っている → キッチン内にいるとみなされる
- キッチンラインの外側に完全に足がある → キッチンの外にいるとみなされる
つまり、ボレーを打つときはキッチンラインに触れないように注意する必要があります。つま先がほんの少しラインに触れただけでも違反です。
ルール4: 身体の一部や持ち物がキッチンに触れてもダメ
ボレーを打つ際に、足だけでなく身体のどの部分がキッチンに触れても違反です。
違反になる例:
- ボレーを打った際にキッチン内に手をついた
- ボレーの勢いでキッチン内に帽子が落ちた
- ボレーを打った際にパドルがキッチンの地面に触れた
- サングラスがボレーの衝撃で落ちてキッチン内に転がった
- ボレーを打った後にキッチン内に膝をついた
「足さえ入っていなければ大丈夫」ではなく、身体の一部や持ち物(帽子、サングラス、パドルなど)がキッチンに触れた時点で違反になります。
ルール5: パートナーに引っ張られてキッチンに入った場合も違反
ダブルスで、パートナーがキッチンに入りそうになったのを引き止めようとして、自分がキッチン内に引っ張り込まれた場合も違反になります。
逆に、パートナーがキッチンの外に引っ張り出してくれた場合はOKです。つまり、パートナーに引っ張ってもらってキッチンに入るのを防ぐのはセーフです。
ダブルスのルール全般については「ダブルスのルール」をご覧ください。
ルール6: キッチン内に入った後は「リセット」が必要
ボレーを打つ前にキッチン内にいた場合(バウンドしたボールを打った後など)、次にボレーを打つためには、両足をキッチンの外に完全に出して「リセット」する必要があります。
具体的な流れ:
- キッチン内でバウンドしたボールを打つ(OK)
- キッチンの外に両足を完全に出す(リセット)
- 再びボレーが可能になる
片足だけ出しても不十分です。両足が完全にキッチンの外にある必要があります。
ルール7: ボレーの前後の一連の動作すべてが対象
キッチンルールは、ボレーの「打つ瞬間」だけでなく、ボレーに関連する一連の動作すべてに適用されます。
これには以下が含まれます。
- バックスイング(振りかぶる動作)
- ボールを打つ瞬間
- フォロースルー(振り抜く動作)
- 打球後の慣性による移動
つまり、「打つ瞬間はキッチンの外にいたけど、バックスイングの時点ではキッチン内にいた」という場合も違反になり得ます。
よくある違反例8選
実際のゲームで頻繁に見かける違反例を紹介します。初心者のうちは特に注意してください。
違反例1: キッチンラインを踏みながらのボレー
最も多い違反です。ネット際のボールを打とうとして、無意識にキッチンラインを踏んでしまうケースです。
対策: ボレーを打つときは、自分の足の位置を意識する習慣をつけましょう。キッチンラインから30cm程度後ろに立つのが安全なポジションです。
違反例2: ボレー後に前のめりでキッチンに侵入
勢いよくボレーを打った後、そのモメンタム(運動量)でキッチンに足を踏み入れてしまうケースです。
対策: ボレーを打った後は、後ろに重心を残すことを意識しましょう。強いボレーほど前のめりになりやすいので注意が必要です。
違反例3: ジャンプボレーの着地がキッチン内
キッチンの外でジャンプしてボレーを打つこと自体はOKですが、着地がキッチン内だと違反になります。
対策: ジャンプボレーを打つ場合は、横方向やキッチンの外側に着地するように意識しましょう。
違反例4: スマッシュ後にバランスを崩してキッチンへ
オーバーヘッドスマッシュを打った後、勢い余ってキッチンに倒れ込むケースです。
対策: スマッシュ後は必ずキッチンの外で体勢を整えることを意識してください。
違反例5: パドルを落としてキッチン内に入る
ボレーの衝撃でパドルが手から離れ、キッチン内に落ちた場合も違反です。
対策: パドルのグリップをしっかり握りましょう。グリップの握り方については「グリップの握り方ガイド」を参照してください。
違反例6: ボレー直後にキッチン内を横切る
ボレーを打った直後にキッチン内を横切って移動した場合、モメンタムルールに抵触する可能性があります。ボレーと無関係な移動であることが明確でない限り、違反とみなされることがあります。
対策: ボレーの直後は、まずキッチンの外で体勢を安定させてから移動しましょう。
違反例7: キッチン内からのリセット不完全
キッチン内でバウンドしたボールを打った後、片足しか外に出さない状態でボレーを打つケースです。
対策: 両足を完全にキッチンの外に出してからボレーに備えましょう。
違反例8: サーブのボレーリターン(2バウンドルール違反との混同)
これは厳密にはキッチンルールではなく2バウンドルールの違反ですが、混同されやすいので触れておきます。サーブのリターンはバウンドしてから打たなければならないため、キッチン付近でのノーバウンドリターンは違反になります。
ルール全体について改めて確認したい方は「ピックルボールのルール完全ガイド」や「スコアリングガイド」をご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. キッチンの中に立っていてもいいの?
はい、キッチンの中に立っていること自体は全く問題ありません。 違反になるのは「キッチン内でボレー(ノーバウンドで打球)をすること」です。キッチン内でバウンドしたボールを打つのはOKですし、キッチン内に立ってボールが来るのを待つのも自由です。
ただし、キッチン内に立っているとボレーができないため、戦略的にはキッチンラインのすぐ後ろに立つのが理想的なポジションです。ポジショニングについて詳しくは「ポジショニングガイド」をご覧ください。
Q2. ボールがキッチンにバウンドした場合、キッチンに入って打てる?
はい、打てます。 キッチン内でバウンドしたボールは、キッチンに入って打つことができます。これは「ボレー」ではなく「グラウンドストローク」になるため、キッチンルールの対象外です。
実際、ディンクラリー(キッチン前での小さなラリー)では、お互いにキッチン内やキッチンライン付近でバウンドしたボールを打ち合うのが一般的な展開です。
Q3. キッチン内からサーブを打てる?
いいえ、サーブはベースラインの後ろから打つ必要があるため、キッチン内からサーブを打つことはできません。 ただし、これはキッチンルールではなくサーブのルールによるものです。サーブについて詳しくは「サーブ完全ガイド」をご覧ください。
Q4. ボレーを打った後、何秒経てばキッチンに入っていい?
時間の制限はありません。 重要なのは、ボレーの「モメンタム(運動量・勢い)」がキッチンへの侵入を引き起こしたかどうかです。ボレーを打った後、完全に体勢を立て直してからキッチンに入るのであれば、ボレーのモメンタムとは無関係なので問題ありません。
Q5. 空中でボレーを打ってキッチンの外に着地すればOK?
はい、OKです。 キッチンの外からジャンプし、空中でボレーを打ち、キッチンの外に着地した場合は違反ではありません。ただし、かなり高度なプレーであり、着地がキッチン内になると違反なので、リスクの高いプレーです。
Q6. ダブルスでパートナーがキッチン違反をしたらどうなる?
違反をしたチームの失点(相手のポイント)になります。 パートナーが違反をした場合でも、チーム全体としてポイントを失います。ダブルスの戦術について詳しくは「ダブルス戦術ガイド」をご覧ください。
Q7. セルフジャッジの場合、キッチン違反は誰が判定する?
公式大会では審判が判定しますが、通常の練習試合やレクリエーションではセルフジャッジが基本です。キッチン違反は違反した側のプレイヤーが自己申告するのがマナーです。ピックルボールはフェアプレーの精神を重視するスポーツなので、自分が違反したと思ったら正直に申告しましょう。
Q8. キッチンルールはシングルスでも適用される?
はい、同じルールが適用されます。 ダブルスでもシングルスでもキッチンルールに変わりはありません。シングルスの戦術については「シングルス戦術ガイド」をご覧ください。
キッチンルールの戦略的意味
キッチンルールはただの制約ではなく、ピックルボールの戦略の核心を形成しています。
ディンクの重要性
キッチンルールがあるからこそ、ディンク(キッチン前での小さなショット) が極めて重要な技術になります。ディンクで相手のキッチンにバウンドさせれば、相手はボレーで返すことができません。必ずバウンドさせてから打つ必要があるため、攻撃的なショットが打ちにくくなります。
これにより、ディンクの応酬(ディンクラリー)という、ピックルボール独特の駆け引きが生まれます。どちらが先にミスをするか、どちらが先に攻撃のチャンスを見つけるか。この緊張感こそがピックルボールの醍醐味です。
ディンクの技術については「ディンク完全ガイド」で詳しく解説しています。
サードショットドロップとキッチン
サーブ側がネットに出るために使うサードショットドロップも、キッチンルールと密接に関わっています。サーブ後の3球目で相手のキッチンにバウンドするような柔らかいショット(ドロップ)を打つことで、自分たちもキッチンライン近くまでポジションを上げることができます。
サードショットドロップについては「サードショットドロップ」で詳しく解説しています。
ポジショニングの基本
キッチンルールがあるため、最も有利なポジションはキッチンラインのすぐ後ろです。ここに立てば、ディンクにもボレーにも対応でき、攻守のバランスが最も良くなります。
逆に、ベースライン付近にいると、相手にキッチンラインを取られて不利な展開になります。いかに早くキッチンラインまでポジションを上げるかが、ゲームの勝敗を左右する重要な要素です。
ポジショニングの詳細は「ポジショニングガイド」をご覧ください。
ロブとキッチンの関係
キッチンライン付近に張り付く相手に対して有効なのがロブ(高いボール) です。ロブで相手を後ろに下げれば、相手は再びキッチンラインまで戻る必要があり、その間に攻撃のチャンスが生まれます。
ロブの技術については「ロブの打ち方」で解説しています。
キッチンルールを身につけるための練習法
練習法1: キッチンライン意識ドリル
キッチンラインにテープを貼るなどして視覚的に意識し、ボレー練習をします。打った後に足の位置を確認する習慣をつけましょう。
練習法2: ディンクラリー
2人でキッチンラインの近くに立ち、お互いのキッチン内にバウンドするようなディンクのラリーを続けます。キッチンのルールを体感しながら、最も重要な技術であるディンクも上達できる一石二鳥の練習です。
練習法3: リセット練習
キッチン内に入った状態からボールを打ち、すぐにキッチンの外に両足を出す(リセットする)練習を繰り返します。試合中にスムーズにリセットできるようになります。
練習法4: モメンタムコントロール
ボレーを打った後に前に出ない練習をします。打った後に後ろに一歩下がるくらいの意識で練習すると、試合でのモメンタム違反を防げます。
その他の練習メニューについては「練習ドリル集」や「壁打ち練習ガイド」もご覧ください。
まとめ
キッチン(ノンボレーゾーン)ルールは、ピックルボールの心臓部とも言えるルールです。
7つの主要ルールのおさらい:
- キッチン内でボレーをしてはいけない
- ボレーのモメンタムでキッチンに入ってはいけない
- キッチンライン上はキッチン内
- 身体の一部や持ち物がキッチンに触れてもダメ
- パートナーに引っ張られてキッチンに入った場合も違反
- キッチン内からは両足リセットが必要
- ボレーの一連の動作すべてが対象
覚えておくべきポイント:
- キッチンに入ること自体は違反ではない
- 違反なのは「キッチン内でのボレー」と「ボレーに起因するキッチンへの侵入」
- バウンドしたボールをキッチン内で打つのはOK
- キッチンルールがあるからこそ、ディンクやドロップが重要になる
- 最良のポジションはキッチンラインのすぐ後ろ
キッチンルールを正しく理解すれば、ピックルボールの奥深さと面白さがさらに深まります。ルールを味方につけて、戦略的なプレーを楽しんでください。
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